あてもなく最寄駅に行き、とりあえず最初に来た電車に乗ってしまう・・・というのも楽しいのですが、できれば事前に散歩コースを決めておきたいもの。とはいっても、分刻みのタイトな計画は避けたほうが無難。ポイントだけしっかり決め、あとは成り行きまかせというのが理想です。
そこで参考になるのが、寺社仏閣を中心にした江戸時代のガイド本『江戸名所図会』。多少難解ではあるものの故事来歴などを知ることもできるし、掲載されている数多くの版画を見ているとイマジネーションが膨らみます。もちろん江戸以外にもさまざまな『図会』が残されているので、お散歩計画を立てるときは、まず図書館に行くのが順当かもしれません。
また、昔の書物以上に重宝するのが有名作家の書いた文章。東京を題材にしたエッセーや短編小説を集めた全3巻の文庫本『東京百話』などは、それぞれの土地や人々にからむお話が満載。お散歩に出る前からお散歩気分になってしまうのが難点ではあるのですが・・・。
▲『新版 江戸名所図会 上・中・下巻』(角川書店/昭和50年発行)。豪華本から文庫本まで、数多く出版されています。その場所にそのまま存在する寺社仏閣の新旧を見くらべるもの愉快です。
▲『東京百話 天の巻・地の巻・人の巻』(ちくま文庫/昭和62年発行)。3冊合わせて1500ページ余りのアンソロジー。安っぽいテレビドラマより数段面白い。